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「ITC Vegas 2021」で明かされた海外最先端の保険DXトレンド・ウェビナーレポート
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「ITC Vegas 2021」で明かされた海外最先端の保険DXトレンド・ウェビナーレポート

米ラスベガスで昨年9月に行われた世界最大級のインシュアテックイベント「Insure Tech Connect 2021(以下、ITC Vegas 2021)」に登場した最先端のインシュアテックトレンドや洞察を紹介するセミナーを開催しました。そのウェビナーの内容をレポートいたします。

(参考)関連資料ダウンロード
第一生命保険株式会社様導入事例レポート
金融業におけるAI導入事例
最新のAI技術活用法

「ITC Vegas 2021」で明かされた海外最先端の保険DXトレンド

開催日時:2021年11月24日(水) 15:30~17:00
開催形式:オンライン(ウェビナー)

代表CEO平野は冒頭挨拶で「現在、日本全国でDXが進んでいる風を感じており、保険業界は非常にDXが進んでいる業界だと感じています。そのなかでもデジタルは重要な領域です」と言及。

ここからは、ITC Vegas 2021のハイライトや注目のインシュアテック事例を紹介していきます。

Insure Tech Connect 2021ハイライト

代表取締役副社長COO 家田佳明

Insure Tech Connectは毎年9月にラスベガスで開催される世界最大級のインシュアテックイベントです。毎回300人ほどのスピーカーと、2,300社、7,000人ほどの人が集まります。今年は2年ぶりにオンサイトでの開催となりました。

メインのトラックと、7つのトラックの合計8つのトラックがあり、さまざまなインシュアテックのテーマについて議論が交わされています。参加企業としては、世界中の名だたる保険会社やインシュアテックプレイヤーが顔を揃えており、日本からは北米にイノベーションハブの組織を持っている会社(AIG、AXA、プルデンシャルフィナンシャル、チューリッヒ、チャブなど など)がほぼ参加しています。

私たちは2019年よりイベントに参加しており、インシュアテックの定点観測をし、サマリーをお伝えするセミナーの開催は今回で3回目になります。本セミナーでは、イベントの全体的なトラックのなかから最新のトレンドをお伝えしていきます。

最初に、インシュアテック企業への投資状況について紹介します。

アメリカの調査会社Forrester Researchによると、今年の7月~9月で世界中のインシュアテック企業への投資は472件、投資額は5.3億ドルとされており、前年同期比で283%とインシュアテック系への投資が伸長していることが分かります。なお2021年1月~12月でみると、15億ドルの投資になると予測されています。
※2021年第3四半期におけるインシュアテック投資のうち、70%はアメリカへの投資に

またS&P Globalでは、上場したインシュアテック企業が、上場後の株価下がりによってM&Aの対象になる可能性が出てくると示唆しています。実際に今年の11月、LemonadoがMetromileを買収すると発表し、大変話題になっています。

ITC Vegas 2021のオーバービュー4つを紹介

(1)テクノロジー的な目新しさの観点ではITC 2019から大きな変化はないが、インシュアテック企業が成長ステージに入り、市場における存在感を高めている

インシュアテックは2017年頃より注目度が高まっており、現在では成長ステージに達してきているといえます。メガプレイヤーの登場によって、ビジネスラインや機能拡張が進み、今後も成長が続くと見受けられます。

これに関する特徴的な例を3つ紹介します。

①インシュアテック企業によるインシュアテック企業の買収

2021年11月、LemonadoがMetromileを買収すると発表、買収価格は5億ドルとされています。LemonadeはP2Pのペット保険、生命保険、家財保険を提供しており、新しく自動車保険の販売も開始していますが、ライセンスの関係でカリフォルニア州でしか販売ができていませんでした。

それに先行して、Metromileは走行距離に応じた自動車保険をアメリカの49の州で販売をしています。今回LemonadeがMetromileを買収することで、自動車保険の販売地域が一気にアメリカ全土に広がることになります。

*両社ともに東京海上ホールディングスと提携をしています。

②インシュアテック企業のさらなる拡張

Mass Mutualの100%子会社でオンライン完結の生命保険を販売しているHaven Lifeは、健康診断での告知がなく定期型の生命保険を販売し、スピーディーな購入ができる顧客体験を提供しています。同社はその強みを踏まえて、商品開発からアンダーライティング、保険金申請までのプロセスを自動化できるSaaS型のプラットフォームを開発し、中小の保険会社向けに提供を開始しました。

このように、インシュアテック企業が自社のテクノロジーを駆使し、ビジネスラインを拡張している動きが特徴としてみられました。

③インシュアテックイベントでも大いなるプレゼンスを発揮

オンラインで住宅や家財損害保険を提供しているHippoは、AIやIoTセンサーを駆使して契約者の被害を最小限に抑えるという特徴があるインシュアテック企業です。

例えばIoTを使って屋根裏の温度を測ります。そのときに特定のスポットの温度が高いと、そこに光が差し込んで水漏れの原因になるのではないかということをセンサーで測り、減災に繋げています。

同社は今年、特別買収目的会社による株式上場を果たし市場でのプレゼンスが高まっています。また、ITC Vegas 2021ではHippoのTシャツを着た社員が会場中に溢れており話題になっていました。インシュアテックのイベントでもメガインシュアテックプレイヤーのプレゼンスが発揮されていることも印象的でした。

*Hippoは三井住友海上火災保険と提携をしています。

(2)カスタマーエクスペリエンスの向上、アンダーライティング&保険金請求におけるテクノロジーの活用は引き続き中心的なテーマであり、「コンセプト」から「導入」のステージに移ってきている

このテーマについてはどのセッションでも多く語られていました。基本的には生活者のニーズは継続的に多様化することや、よりよい保険体験に関する要求は不可逆であり、スムースで簡便な保険体験を求める動きは今後も加速していくと思われます。

そのうえでオムニチャネル化とパーソナライゼーションは引き続き中心のテーマになり、その際に非構造化データ(保険会社の内外にあるさまざまなデータ)をいかに高度に活用し、商品開発に活かせるかがカギになります。

(3)アメリカではデータ活用の広がりによって、リスクの対象をより新興・特化したプレイヤーが出始めている

アメリカの保険業界では新興・特化リスクに対するインシュアテックプレイヤーが出てきており、そのなかから2社紹介します。

1社目は2018年に設立したCyber Fortressという会社で、eコマースサイトが何らかの障害で止まってしまったときの売り上げの損失を補償するパラメトリック保険を提供しています。2000以上の特徴からリスクモデルを統合しセグメント化することで価格を設定しています。ダウンタイムの発生要因として、ヒューマンエラーやサービスプロバイダーの障害、不正アクセスなどが挙げられます。

2社目は2018年に設立したzesty.aiという会社で、山火事や洪水などの自然災害による建物の被災リスクを精密に予測するサービスを提供しています。気候科学と衛生写真から取得した1.5億以上の物件データを学習データに活用し、ビルや一軒家などの物件固有の特徴を65以上に分類、さらに地域と物件固有のデータを組み合わせて損害の予測を算出するサービスを提供しています。 同社は損保会社向けにデータを提供しており、アメリカの損保会社のトップ100社のうち、半数以上の会社にデータを提供しているといわれています。

(4)組み込み型保険のプレイヤーも多く登場し、カスタマーエクスペリエンスの観点では学ぶ点が多い

今回のITC Vegas 2021では多方面でテーマとして取り上げられており、引き続きインシュアテックのトピックスの1つになっています。

しかし、組み込み型保険は傷害保険、旅行保険などが中心でマーケットサイズが小さいことがあり、注目度は限定的とみることができます。一方、保険をシームレスに体験できるだけではなく、最初の接点から購入までの過程全体のUXには学ぶところが大きいとされています。

これらの過程から組み込み型保険は、今まで以上の顧客データを収集することができる期待や、不正防止対策としても機能しているという側面もあります。

その他のサブトピックスとしては以下の5つが挙げられます。

最先端のインシュアテック事例を紹介

事業開発部 林弘樹

ITC Vegas 2021で実際にプレゼンを行っていた企業のなかから、「損保」の事例をピックアップして紹介します。

【損保】CLAIM GENIUS:自動車保険査定・支払い業務改善

CLAIM GENIUSは自動車保険提供者向けに、AIとCGの技術を活用した損害査定のソリューションを提供しています。事故があった車両の画像をスマートフォンで撮影して送信すると、損傷確認、修理や部品交換にかかる費用と時間を算出します。またアップロードした画像からは外部損傷のみならず、内部損傷まで分析できることが特徴です。

【損保】Hosta AI:建物・家財保険の引受および査定の効率化

Hosta Labsが提供するHosta AIは、アップロードした写真から建物および家具の構造・面積・材料などを評価し、2次元・3次元のレポートを作成。損傷部分も検出できるため、引受・査定業務に必要な情報を一挙に取得することが可能です。屋内の空間的な関係や、家具の材質などのデータを把握することでより詳細で正確な引受・審査を可能にします。

事業開発部 マネージャー 大塚洋平

次に「生保」に密接に関係するものと、「生保と損保の両方」の事例を紹介します。

【生保】Atidot:保有データの戦略的利活用の促進

Atidotは、生命保険会社向けにクラウドベースのAIおよび予測分析プラットフォームを提供しています。保険会社が保有するデータの大部分は有効活用されておらず、それを外部のデータソースで強化することで、商品のアップセル・クロスセルのためのターゲット選定、保険料の持続性、解約失効率などを予測することができます。

【生保/損保】Shift Technology:査定業務における不正検知と自動化

Shift Technologyは、引受や支払い査定時の不正検出をメインとしながら、査定プロセスの自動化ソリューションを保険会社に提供しています。類似の保険金請求情報の分析やSNS分析、無関係にみえる請求データの横断的な分析をAIによって行い、支払いの自動化によって高まる不正リスクに対応することが可能です。

【生保/損保】Zelros:顧客フロント業務の高度化

Zelrosは保険会社に向けて、音声や各種文書などの構造化データと非構造化データを活用し、保険に特化したAIビジネスプラットフォームを提供しています。いわゆるCRMのようなもので、顧客単位で契約内容や情報を管理し、営業やCSの担当者に対して推奨アクションをリアルタイムでアドバイスします。また、担当者のレベルに合わせたセールスフローと学習パスの作成も可能です。

代表取締役社長CEO 平野未来

「弊社はこれまで複数の企業のデジタル化やDX(成長戦略)の支援をしていくうえで、“AIの導入検討”から“AIによる成長戦略”までというように、各企業においてさまざまなフェーズがあります、シナモンAIはそれらを一貫してサポートしています。」

ウェビナーでは保険領域におけるAIの活用シーンや導入事例を紹介。保険の顧客体験を向上させるAIの短期テーマ案と中長期のビジョンをどのように考えているのかについても触れました。

シナモンAIでは既に複数の保険会社に対して、プロダクトの提供を行っています。

2021年3月には保険金請求書類の自動査定AIシステムを損保ジャパンと共同開発。損保ジャパンが提供するスマホ完結型医療保険へ導入しています。

また8月には、エネエヌ生命に対しAI-OCRによる非定型帳票の読み取りとデータ化の自動化を支援。さらに11月にはイーデザイン損保が新たに発売した新自動車保険「&e」に導入しているAI画像認識(保険証券自動読み取り)機能を共同開発しています。

直近では本年1月、イーデザイン損保が新たに発売した新自動車保険「&e」に導入しているAI画像認識(保険証券自動読み取り)機能を共同開発するなど、AIを用いた支援を多岐にわたって展開しています。

■それぞれのニュースリリースはこちらよりご確認ください。

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