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DXの鍵はMTPへの強烈な臨場感

DXの鍵はMTPへの強烈な臨場感

本来DXとはデジタル技術によりビジネスモデル自体を変革し、大きなインパクトをつくることである。しかし、日本企業のDXは、業務効率化やコスト削減を目的とした単なるデジタル化がほとんどである。日本企業の多くが中期経営計画を立て、改善主義や計画主義から脱せていないからだ。現状とはまったく異なる世界観をもたらす、大きな夢や目標であるMassive Transformative Purpose*(以下、MTP)を描かず、中期的な改善を続けた結果、「失われた30年」が引き起こされてしまった。変革の鍵は、30年先の未来を見据えるMTPと、その未来に対しての臨場感だ。

GoogleやTeslaなど、飛躍的に成長を遂げる先進企業は必ずMTPを描いている。一例として、Netflixの例を紹介したい。Netflixは、「世界中の人を楽しませる」というMTPを描き、臨場感を持ってそれを実現してきた企業だ。Netflixが創業した1997年では、レンタル屋に行くことが当たり前であったが、創業者のヘイスティングス氏は、DVDを借りて返す手間に違和感を持ち、業界初の宅配DVDサービスを立ち上げた。さらに、2007年にストリーミングサービスに着目をし、莫大な投資をした。当時のネット回線は貧弱なものであったが、将来の高速回線を予測し、世界中の人を楽しませる動画配信サービスの先駆者となった。臨場感があるからこそ、今の現実に強烈な違和感を持ち、爆発的な行動力が生み出され、変革につながっていくのである。

『トランスフォーメーション思考』Amazon

30年前に当たり前だった駅の伝言板や公衆電話を思い浮かべてみると、強烈な違和感が生まれないだろうか。それは私たちが2022年の世界を知っているからである。同様に、30年先の未来を見据えるMTPに強い臨場感を持つとき、現状に対して同じレベルの強烈な違和感が感じられるはずだ。より詳しい内容については、弊社著書『トランスフォーメーション思考』(翔泳社)でも紹介しているので機会があればご覧いただきたい。パーパスを抽象的な言葉で終わらせず、MTPまで昇華させ、高い臨場感を持って変革を起こしてほしい。

*野心的な変革目標。シリコンバレー、シンギュラリティ大学の研究で「飛躍型企業の主な性質」と考えられている

シナモンAI 代表取締役社長CEO 平野 未来

テキストは経済同友会 広報誌『経済同友』3月号 P.11 リレートークより転載