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新年のご挨拶と2026年AIトレンドの展望
あけましておめでとうございます。シナモンAIの平野未来です。
旧年中は、シナモンAIの取り組みに多大なるご支援・ご関心を賜り、誠にありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2026年、AIは実験段階から本格的な価値創出フェーズへ移行します。
世界経済・地政学では米中対立が技術と投資を二極化させる一方、各国は自国優位とガバナンス強化を目指す国家AI戦略を推進しています。
企業はPoCから脱却し、「何ができるか」ではなく「どこに使うか」に焦点を当て始めました。
技術面ではマルチモーダルAIやエージェント型AIが成熟期に入ります。主要産業では、先行企業が「部分最適の自動化でなく、業務そのものの再設計」によって大きな成果を上げており、AI活用が本番実装へと分岐するポイントが見えてきました。
社会面では雇用やスキルへの影響が現実化しつつあり、説明責任やデータガバナンスなどAIの信頼確保が競争力のカギとなります。
投資環境ではAI関連がVC資金の過半を占めるまでに至り、プラットフォーム企業とスタートアップの協業・買収が活発化しています。
このようにすさまじい勢いで進化しているAIのトレンドを下記に記します。
AIファーストなオペレーション
2025年に起きたことと、2026年予測の技術進化は下記とおりです。
| 技術 | 2025年に起きたこと | 2026年予測 |
|---|---|---|
| LLM | 業務での利用が一般化。Copilot型(人が使うAI)が主流。最新のLLMではIQ150を超えるなど、ほぼ全ての人間より知性が高くなった。 | 単体利用から業務プロセス組み込みへ。汎用LLM一択ではなく、評価軸は性能より安定性・コスト・運用性へ。 |
| RAG | 幻覚対策として急速に普及。社内文書検索・QAで本番利用が始まる。PoC〜部分運用が多数。 | モモデル自身が継続学習して知識をアップデートし続ける自己成長RAGへ。単独RAGではなく、AIエージェントや業務フローと統合。 |
| AIエージェント | PoCが急増。汎用型のAIエージェントが当初は注目されたが、エージェントワークフローが主流。一部業務で限定的な自律実行が始まるが、価値不明・制御不安で停止例も多い。 | 業務内で動くエージェントのみが生き残る。汎用型より、目的・権限が限定された実務特化型が主流というのは引き続きのトレンド。AIファーストなオペレーションの中核に。 |
| マルチモーダル | テキスト・画像・音声の統合理解が実用水準に到達。UI/UX改善や現場支援で活用開始。 | 標準インターフェース化。エージェントの目・耳・手として組み込まれ、製造・医療・物流など現場AI活用を加速。 |
このような技術は日々進化していますが、未だAIは万能ではありません。2026年は人の作業を置換するのではなく、プロセスをAI向けに再設計し直すことが求められるでしょう。
エージェントが増えるほど、ハルシネーションより誤作動・誤連携・権限ミス・ログ不備で起きます。
そのため、どこにAIを活用するのが最もインパクトがあるのかを前提に業務を再定義しなおす必要が出てきます。
例えば、シナモンAIでは金融業界における査定業務のAIエージェント化を行っていますが、満遍なくAIを活用するのではありません。何重にもある査定業務の中で、1次査定、2次査定など前の領域は業務をAIにシフトし、後半の領域に人の業務を寄せています。
また、AI-first Opsで重要なのは賢さより稼働品質(Reliability)です。
Reliable AI(運用で壊れない)が、Explainable AI(説明可能)を含む形で現場要件化します。
その中で、人は作業者から、例外処理者・意思決定者・品質責任者へ役割転換するでしょう。
| シナモンAIではAIエージェントやRAGの事例が様々あるので、ご興味ある方はお問合わせください。 |
AI for Science
調査 → 仮説 → 実験 → 文書化のプロセスを自動化し高速に回し、その循環の中から新しい発見が立ち上がる確率を最大化するのがAI for Scienceです。
| フェーズ | 成熟度 | 現状の到達点・特徴 |
|---|---|---|
| 調査 | ★★★★★ | 文献・実験・観測データを横断的に検索・要約できる。実務・研究の現場で既に実装段階。 |
| 仮説 | ★★★☆☆ | 高次元・非直感的な仮説候補を提示可能。探索支援として有効だが、取捨選択は人間依存。 |
| 実験 | ★☆☆☆☆ | 先端的な事例では自動化ラボや制御は増加中。フィジカルな実装が伴うため進展はあるものの、一般化は遅い。 |
| 文書化 | ★★☆☆☆ | 文章生成は可能だが、検証性・再現性・科学的責任を伴う記述は人間判断が不可欠。 |
2025年はDeep ResearchとRAGにより調査の自動化が大躍進しました。
2026年は、AIが「候補を出す」から一歩進み、自動実験(試料調製→合成→計測→解析までつないだ案件が増えるでしょう。ボトルネックは、モデル精度よりも実験の標準化・計測データ品質・安全性です。
日本は装置・材料・製造プロセスが強いので、ラボ自動化×装置×データ仕様の標準取りは勝ち筋になり得ます。
| シナモンAIではRAGによる社内の技術文書リサーチの事例があるので、ご興味ある方はお問合わせください。 |
Physical AI(ロボットとAIの融合)
Physical AIとはロボットアームやモーター等のアクチュエータを通じて物理世界に直接働きかける身体性を備えた知能であり、現実空間で自律的に行動します。
従来のロボットは人間が与えた指示を忠実に繰り返す存在でしたが、Physical AIは状況に応じて自律的に振る舞いを変化・進化できる存在へと進化します。
▽ 次世代製造業向けPhysical AI
日本のお家芸である製造業の生産性向上・自動化は最優先テーマ。特に、自動車・エレクトロニクス製造ラインでの自律ロボット導入、精密組立ロボットへのAI適用、熟練工の技能継承をAIロボで代替などは、日本が主導すべき領域です。
▽ 防災向けPhysical AI
地震や台風といった災害大国である日本にとって、防災テックは国民生活に直結します。気候変動により災害が今後増加する中、災害対応ロボットを開発することは、日本が世界をリードすべきミッションといえます。
2026年は、ロボティクス基盤モデル、物理シミュレーション、エッジ推論の収束で、倉庫・工場・インフラ等で導入の現実解が増えるでしょう。
先行実装領域は屋内・準構造環境です。環境変動が限定され、KPI(生産性・安全・人手不足)が明確だからです。
- 倉庫・物流(ピッキング補助、搬送、仕分け)
- 工場(検査、段取り支援、部材供給)
- インフラ保守(巡回、点検、危険作業補助)
- サービス(限定環境の接客・案内)
ヒューマノイドの実現も夢がありますが、まずは作業カテゴリ別の勝ち筋に収束するでしょう。持つ・運ぶ・積むといった繰り返しの作業や危険区域の作業のように単位作業での設計が主流になると考えます。
AIの国家戦略化
2025年の大きな変化はAI国家戦略をアメリカ・中国が7月に、EUが10月に、日本も12月に策定したことです。
AIは生産性を上げるだけでなく、技術を軍事・経済・情報・外交に活用できるため、国力に直結するからです。
日本においても、AI・半導体・電池・エネルギーと経済安全保障の台頭から直近では大きく変わりつつあります。戦後〜1980年代は政府主導型産業政策国家でしたが、過去30年は民間主導にシフトしていたことを考えると転換点を迎えていると感じます。
3国+EUのAI国家戦略の比較は下記のとおりです。
| 観点 | 🇯🇵 日本(人工知能基本計画) | 🇺🇸 米国(AI Action Plan) | 🇨🇳 中国(全球AIガバナンス行動計画) | 🇪🇺 EU(Apply AI & AI in Science) |
|---|---|---|---|---|
| 基本目的 | AI利活用と安全・信頼の両立、AI社会実装推進 | AI競争力・主導権維持、イノベーション加速 | グローバル協調・安全・公平・開放 | AI採用加速、産業競争力強化、科学研究 |
| 重点方針 | 利活用促進、開発力強化、ガバナンス主導、社会変革 | イノベーション優先、規制緩和、インフラ・競争力 | 機会共有・協力、産業応用拡大、国際協調 | AI産業への普及(Apply AI)、AI科学研究の強化(AI in Science) |
| AIと安全保障 | 主権・信頼重視、社会インフラ化 | 安全保障と競争戦略の中心 | 安全かつ管理可能 | 技術主権(Sovereignty)や自主性を強化 |
| インフラ戦略 | 計算資源・データ基盤整備 | データセンター/半導体/電力など | デジタルインフラ強化で国際協力 | AI Gigafactory / AI Factory 等 |
| 産業活用の焦点 | 公共・医療・製造・現場AIなど多分野 | 広範囲の産業および政府利用 | 全産業分野へのAI応用 | 製造・医療・エネルギー・防衛など |
| 研究・科学戦略 | 基礎研究・人材育成・国際連携 | 基礎・応用研究促進 | 国際協力枠組み強化 | RAISE構想による研究資源統合 |
| データ戦略 | データ利活用・共有促進 | データ基盤整備で開発促進 | データの開放・共有促進 | データユニオン構想 |
| ガバナンス/規制 | リスク対応と推進の両立 | 規制は競争力の阻害要因とみなす傾向 | 安全性・倫理性・公平性重視 | AI Act(リスクベース) |
| 国際展開 | 国際協調・ルール形成に関与 | 同盟国連携・国際主導権 | 開放的な国際協力を重視 | 国際ルール形成・協調 |
| ユースケース重視 | 社会課題対応・産業最適化 | 国防・政府・民間全般 | 産業全般・社会発展 | 産業競争力・科学・公共 |
| AI for Science | 重点分野(創薬、材料、気候、量子、計算科学)国家戦略に明示的に位置づけ | 極めて重視(国防・エネルギー・生命科学・宇宙)国家競争力の源泉 | 重視(基礎科学+国家重点プロジェクト)主に国内向け | 最重点(AI in Scienceが独立戦略)RAISEで欧州横断 |
| Physical AI | 重点分野(製造、物流、医療、介護、インフラ、災害)人口減少対策と直結 | 軍事・宇宙・自律兵器で最重要民間は市場任せ | 国家重点(ロボット・自動化・スマート製造)社会統制と産業競争力 | 限定的(産業ロボ・自動化中心)ヒューマノイド等は慎重 |
AIを国家戦略の中核に据えるAIインフラ強化、社会実装を促進するというのは3国+EUで共通しています。
覇者であり続けたい米国。
実力は米国と同等、だが世界で使われたい中国。
その中で依存を下げ、国力拡張装置というよりは国力維持装置として使いたい日本。
支配されないために、ルールを作りたいEU。
戦略の色合いは
日本:推進 × 安全信頼の両立に主眼
米国:競争力・主導権・規制緩和が前面
中国:国際協調・安全性・公平性を重視
EU:産業導入・科学研究・技術主権・リスクベース規制の両立
といった違いがあります。
このように各国がAI国家戦略を定める中、私自身も高市政権における日本成長戦略会議に2025年11月に就任しました。
また、日本成長戦略会議の下部組織であるAI・半導体ワーキンググループ及び創薬・先端医療ワーキンググループの有識者に2025年12月に就任しております。
岸田政権・石破政権における新しい資本主義実現会議からAIについての提言を数多くしてまいりましたが、AIが国家戦略の要となった今、日本のAI戦略に少しでも貢献できるよう精進してまいります。
また、AIができることが凄まじいスピードで拡大する時代だからこそ、意志が重要になります。意志についての本を2026年3月に東洋経済新報社より出版予定ですので楽しみにお待ちください。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
株式会社シナモン
代表取締役社長 CEO
平野未来